2011年01月13日
下り線にも乗りましょう──
私の人生訓のひとつです。(4)
汗か涙を流す必要がある
どちらも嫌と言うなら、早晩血を流すことになる
四国八十八ヵ所詣で(院長退職後、現在進行形)
邉見氏は、赤穂市民病院以外の舞台でも、天晴れな活躍ぶりを見せている。病院長歴23年を含め赤穂で地域医療に取り組んだ30余年の経験をバックボーンに、医療の未来を憂えて発せられる言葉は実にリアル。特に医療政策の総本山とも言うべき中医協の委員となって以降は、明快な論旨と聞く者の心をつかむ発言で、全国区で注目される存在となった。
2009年5月20日、診療報酬改定に関する特別調査の結果の一部が報告された中医協総会への出席後に行われた記者会見での、「診療報酬で医療を変えるのはもう無理だと思う」は、制度の限界を指摘したコメントとして広くメディアに取り上げられた。
「私は、長く『システムに点数のつく診療報酬制度にすべき』と言いつづけています。薬や物にばかり点数をつけてきた制度が、やっと技に点数をつけるようにはなった。しかし、まだまだ足りず、医療の実態には追いついていません」
システムに点数をつけるとは、具体的には──。
「たとえばドクター3名、ナース5名、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師各1名を常時当直させ、絶対に救急を断らない。そんなシステムを堅持する病院には、患者が来ようが来まいが加算を与えるべきでしょう。
患者を治療せずに報酬が発生する点に疑問を持つ方には防衛予算をイメージしていただきたい。終戦後60数年、我が国は一度たりとも他国から攻められていません。ですが、今年度で言えば、約5兆円の年間予算が防衛に費やされている。『攻められたときに戦うため』に予算を計上できるなら、『患者が運ばれてきたときに診察をするため』にだって予算を割いてしかるべきです」
全国公立病院連盟総会にて故舘田邦彦先生夫妻とともに(富良野の富田ファームにて、富田氏も交え)
まさに、舌鋒鋭い。しかも、その鋭さは一方的に政策立案者のみに向けられるわけではない。全国自治体病院協議会会長の立場からは、自治労(全日本自治団体労働組合)に向け、「皆さんは、汗か涙を流す必要がある。どちらも嫌と言うなら、早晩血を流すことになりますよ」と厳しい言葉を投げかけた。
「ある意味、酷だとは、わかっています。けれど、そこまでの覚悟をしなければ、日本の医療は守れません」
地球は丸い。下り電車に乗ったつもりが、いつの間にか上り電車になっていたりする。逆もまた、真であろう。上り電車に乗ったつもりが、降りてみたら下り線の駅だったなど、いくらでもありえる話だ。だから人生という旅はこのうえなく面白い──邉見氏の固い決意を秘めた邪念のない笑顔を見ていると、どこからかそんな声が聞こえてくるようだった。
記事提供:株式会社メディカル・プリンシプル社
2010年9月号より
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- 邉見 公雄 (へんみ・きみお)
- 赤穂市民病院名誉院長
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1968年 京都大学医学部卒業
京都大学医学部附属病院研修医1970年 大和高田市立病院外科医員 1972年 京都大学医学部附属病院第二外科医員 1974年 京都逓信病院外科医員(京都大学医学部研究生) 1978年 赤穂市民病院外科医長 1987年 赤穂市民病院病院長 2009年 赤穂市民病院名誉院長
中央社会保険医療協議会委員
全国自治体病院協議会会長
全国公私病院連盟副会長
京都大学医学部臨床教授
京都大学医学部附属病院運営顧問会議委員
京都府公立大学法人経営審議会委員
同志社大学大学院アドバイザリー・ボード
有限責任中間法人京都大学外科交流センター相談役


