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【透析療法(人工透析)特集】
透析療法(人工透析)の基礎知識

血液を浄化する重要なはたらきをする腎臓。その腎機能が著しく低下したために透析療法を受けているわが国の透析患者数は毎年増え続け、2009年末で約29万人(日本透析医学会/2010年統計調査)に達しています。高齢化社会の医療と健康をみすえ、腎臓病と透析療法についての基礎知識を専門家の先生にうかがいました。

腎不全になってしまった人の選択治療

●腎臓とそのはたらき
腎臓は、腰の上の両側にあるそら豆のような形をした左右一対の臓器です。その基本的な役割は、血液をろ過して尿をつくることによって、からだの中の余分な水分や酸・ミネラル、老廃物(たんぱく質の燃えカスなど)を体の外に捨てることです。また、血圧を維持するホルモンや造血ホルモンをつくって血圧のバランスをとり、貧血を防ぎ、ビタミンDを活性化して骨の質や量を維持する役割もあります。

腎臓の働きがわるくなると…

  • 老廃物が溜まる → 尿毒症(食欲低下・嘔吐・意識障害)
  • 余分な水分が溜まる → むくみ、高血圧、肺水腫(胸に水が溜まる)
  • ミネラルバランスがわるくなる → 高カリウム血症、高リン血症
  • 血液を弱アルカリ性に保てなくなる → アシドーシス(体に酸が溜まる)
  • 造血ホルモンがつくれなくなる → 貧血
  • ビタミンDがつくれなくなる → 低カルシウム血症、骨の質・量の低下

●生活習慣病からの腎臓病に注意
尿異常(たんぱく尿・血尿)や腎形態の異常が3ヶ月以上続くか、または3ヶ月以上腎機能が正常の60%未満に低下した状態を「慢性腎臓病」と言います。

「慢性腎臓病」のタイプとしては、「腎炎」と呼ばれる疾患がよく知られていますが、1998年以降は、糖尿病から二次的に発症する「糖尿病性腎症」が透析導入患者(透析を始めた人)の原疾患のトップとなっており、現在も増加の一途をたどっています。また、高血圧や老化を原因とする「腎硬化症」も増加しています。こうした「生活習慣病からの腎臓病」の増加に伴い、透析導入患者の平均年齢は年々高齢化しており、2009年では67.3歳に達しています。

年別透析導入患者の主要原疾患の推移

●「透析療法」と「腎臓移植」
慢性腎臓病が進行して腎機能が正常の10%以下までに低下した状態(末期腎不全)になると、回復の可能性がなく、尿毒症や高カリウム血症、強い酸血症、心不全など生命にかかわる病状に陥るため、「透析療法」か「腎臓移植」を早期に行う必要があります。

このうち、「腎臓移植」は臓器提供を必要とするため、日本では年間千数百例しか行われておらず、移植希望者が約1万2千人も待機しているのが現状です。そこで多くの患者は「透析療法」を選択することになります。

●「透析療法」とは
腎臓に代わって人工的に血液を浄化する方法で、「血液透析」と「腹膜透析」の2タイプがあります。日本の慢性透析患者約29万人のうち、通院を基本とする「血液透析」を受けている人が約28万人と圧倒的に多く、在宅医療を基本とする「腹膜透析」を受けている人は約1万人程度です。

【血液透析】−−人工腎臓に血液を通して尿毒素を除去

  • 腕の血管に針を刺して、ポンプを使って血液を体の外に導き出し、ダイアライザ(透析器)に循環させて毒素や不要なものを除去した後、体に戻します。
  • 基本的に医療機関に週2〜3回通院し、1回4〜5時間かけて血液透析を行います。
    (勤務後に受けられる夜間透析や、自宅に透析装置を設置して行う方法もあります)

【腹膜透析】−−自分のおなかにある腹膜を使い尿毒素を除去

  • おなか(腹腔)にカテーテルを通して腹腔内に直接腹膜透析液を注入し、一定時間貯留させて、血中の毒素や水分、塩分などを透析液に移動させた後、透析液を体外に取り出します。
  • 基本的に在宅医療として行い、通常1日4回、腹膜透析液を交換します。1回の交換時間は約30分です。

●透析を受ける医療機関を選ぶには
透析療法を行っている医療機関は日本に約3800ありますが、日本透析医学会が信頼できる施設であると認定している認定施設が約420、それに準ずる教育関連施設が約450あります。また、日本透析医学会の専門医を同会のホームページでチェックできますので、そうした医師が在籍しているかどうかも一つの目安にしてよいでしょう。

そのほか、勤務先などの近くで夜間透析を行っているところや、送り迎えをしてくれるところなど、自身のライフスタイルにあった受診先を選ぶことも大切です。

●医療費はどのくらいかかる?
透析療法は、医療費としては一般的に年間400万円といわれるほど高額ですが、透析患者は特定疾病療養費制度によって、医療費の自己負担が所得に応じて1ヶ月1万円、または1ヶ月2万円になります。

●腎臓病を予防するためのポイント

  • 塩分のとりすぎに注意。
  • たんぱく質のとりすぎに注意。
  • 糖尿病の人はカロリーなど食事をきちんとコントロールすること。
  • 高血圧の人は血圧をきちんとコントロールすること。
  • 健康診断を受診して異常の早期発見に努めること。

プロフィール

秋澤 忠男 (あきざわ ただお)
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門 教授。日本透析医学会理事長。
腎臓学、特に腎不全の病態と治療を専門とし、透析医学、血液浄化医学に詳しい。
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