日本の国民の四人に一人は「頭痛もち」であるといわれています。しかし、頭痛と一言でいっても、そのタイプはさまざま。個人差も大きいので、「これで決まり」といった確実な治療法はひとつとしてありません。自己の頭痛の原因と誘因を知り、それらをできるだけ回避・改善するように心がけながら、自分にあった対処法を見つけていくことが大切です。
頭痛のタイプにあわせた対応を
「一次性頭痛」と「二次性頭痛」
頭痛は、大きく二つに分けられます。脳や体に病気がないのに繰り返し起こるような「頭痛もちの頭痛」を一次性頭痛(慢性頭痛)といい、脳や体に病気があって起こる頭痛を二次性頭痛といいます。二次性頭痛には、くも膜下出血や脳腫瘍など命の危険にかかわる病気が潜んでいることがあります。とくに、いつもと変わった頭痛、突発的な頭痛が起こった場合は「危険な頭痛」の可能性があるので、すぐに神経内科や脳神経外科を受診することをおすすめします。
<原因別にみる頭痛のタイプ>
1.血管からおこる頭痛(一次性頭痛)
【片頭痛】
片頭痛の仕組み(三叉神経血管説)第一段階/「ストレスからの開放」・「生理」・「人ごみ」・「まぶしい光」・「アルコール」など、何らかの「きっかけ」により、血管の周りの神経(三叉神経)が刺激される。
第二段階/三叉神経の終末から、痛み物質(P物質、CGRP)を血管に放出される。
第三段階/血管の拡張と炎症がおこり、頭痛が起こる。
頭の片側が痛むことが多いので片頭痛と呼ばれますが、両側が痛むことも少なくありません。成人の1割弱が片頭痛もちといわれます。とくに女性に多い頭痛です(男性の4倍)。片頭痛とうまく付き合うには、まず正しい診断を受けたうえで、発症のタイミングを的確にとらえて応急対策や治療薬の服用を行うことが大切です。
症状
頭のこめかみから眼のあたりにかけ、脈打つように「ズキンズキン」あるいは「ガンガン」、「ドクンドクン」と痛みます。しばしば吐き気も伴います。頭痛の頻度は月に1〜2回、少なくて年数回、多いときで週に1回程度、繰り返し起こり、症状は4〜72時間持続します。片頭痛の最中は光や音、臭いなどに過敏となるほか、マッサージや入浴、運動が症状を悪くさせることがあります。
応急対策
- 暗い静かな部屋で横になる。仕事で寝るのが無理な場合は、椅子にかけて安静にするだけでもラクになる。
- 痛むところ(拡張した血管の部分)を冷やす。
- 睡眠をとる。(ただし、睡眠をとりすぎると頭痛が起こる場合も)
- 「はちまき」をする。(拡張している動脈が押さえられ、ラクになる)
- コーヒー・緑茶などカフェインを含むものを摂る
治療
薬物療法としては、発作が軽いうちに、例えばお辞儀をするとズキンとするといったタイミングで、片頭痛の処方薬「トリプタン」や鎮痛薬を服用するのがコツです。頭痛がひどくなってからでは、鎮痛薬はよく効かないうえ、吐き気のために内服もしにくくなります。嘔吐がひどくて薬がのめなければ、「トリプタン」の点鼻液や口腔錠、鎮痛薬の坐薬などを病医院で処方してもらいます。片頭痛と緊張型頭痛が合併していると、ついつい鎮痛薬を毎日のように服用しがちです。3か月間、10日以上鎮痛薬を服用し続けると「薬物乱用頭痛」といって頭痛がかえってひどくなります。月10回以上、鎮痛薬に手が出る方は頭痛に詳しい先生のところに受診されたほうがよいでしょう。
【群発頭痛】
頭の片方が痛むところが片頭痛と似ていますが、いったん起こり始めると1〜2ヵ月間の間、連日のように群発するのが特徴です。群発期は年に1〜2回、あるいは2〜3年に1回にあらわれます。20〜30歳代の男性に多いタイプの頭痛です。
症状
頭痛がある期間、毎日のように、片方の眼、眼の上、こめかみのあたりに「えぐられるような」激しい痛みが起こります。ただし、頭痛の持続時間は1〜2時間と短いのが特徴です。
睡眠中に起こりやすく、明け方の痛みで目をさますことが少なくありません。発作中、頭痛の側の眼が充血したり、涙が出たり、鼻が詰まったり、鼻汁が出たり、顔に汗をかいたり、まぶたがさがったり、脹れたりすることがあります。片頭痛と違って吐き気や嘔吐はあまりありません。群発期には飲酒で頭痛が誘発されます。
応急対策
- 発作が起こりそうになったら、窓を開け、深呼吸を繰り返す。
- 痛むところ(拡張した血管の部分)を冷やす。
治療
発作時には、群発頭痛の処方薬「スマトリプタン」の注射が即効的です。次善の策として「スマトリプタン」の点鼻液を吸入する手もあります。このほかでは病医院での「酸素吸入」が特効的で、純酸素(毎分7リットル以上)を20分ほど吸入すると群発頭痛がラクになります。
群発頭痛を起こりにくくする予防薬として、本来は狭心症の処方薬である「ワソラン」などを用いる場合もあります。
<原因別にみる頭痛のタイプ>
2.筋肉や精神の緊張からおこる頭痛(一次性頭痛)
頭や首のまわりの筋肉のコリや精神の緊張からも、頭痛が起こります。これを「緊張型頭痛」といいます。 頭が締め付けられるような、重苦しいタイプの頭痛です。ぞくに「頭重(ずおも)」といわれているのは、このタイプの頭痛です。
【緊張型頭痛】
精神的なストレスと、身体的なストレスの両方から起こる頭痛です。日本では成人の22%、2200万人が悩んでいるといわれ、頭痛の原因の7〜8割を占めています。中高年に多く、女性にも男性にもみられる頭痛です。頭痛の頻度や持続期間はさまざまです。ストレスを受けやすい、几帳面・生真面目な方がなりやすいので、自分に適したリラックス法を学ぶことも重要です。
症状
後頭部から首筋にかけての頭痛で、頭全体や、はちまき状に痛むこともあります。肩コリや顎関節症、目のつかれ、体のだるさ、ふわふわしためまいなどを伴うことが多く、圧迫感、緊迫感、頭重感があるのが特徴です。頭痛の程度は軽度〜中等度で、日常生活への影響は軽度です。吐き気や嘔吐、音や光に対する過敏は原則としてありません。
応急対策
- 一休みする。遠くを見る。喫茶する。
- パソコンなどを扱っているとき、考える際は、上を見る。
- 頸部や肩のこったところを、指圧・マッサージ、入浴、蒸しタオルなどでほぐす。
- 適度な運動やストレッチを行う。
- コリに効くスプレーや貼り薬を薬局で調達し、こった部分に適用する。
治療
本質的には、緊張型頭痛は「痛くて仕方がない、薬をのみたい」という状態にはなりません。もし頭痛がつらいレベルにまで達したとすれば、それは緊張型頭痛から片頭痛が誘発されたのかもしれません。この場合は、手持ちのOTC鎮痛薬(市販鎮痛薬)を服用します。つらい頭痛、日常生活がおびやかされる頭痛がある場合は受診をお勧めします。
<原因別にみる頭痛のタイプ>
3.脳や全身の病気から起こる頭痛(二次性頭痛)
脳や全身の病気による頭痛は「危険の兆候(しるし)」です。とくに危険な頭痛としては、くも膜下出血、脳腫瘍(のうしゅよう)、慢性硬膜下血腫、髄膜炎などがあげられます。一例として、くも膜下出血について挙げておきましょう。
【くも膜下出血】
命にさしつかえがある頭痛はいろいろとありますが、一番恐ろしい頭痛は「くも膜下出血」です。金槌で殴られたような、突然の頭痛が特徴で、発症が疑われたらできるだけ早く脳神経外科を受診しなければなりません。
症状
脳動脈瘤の破裂が主な原因となり、頭全体あるいは後頭部を中心に、金槌で殴られたような激しい頭痛に突然襲われます。頭痛があまり目立たないこともありますが、その場合もガーンとする衝撃感、気が遠くなる感じや、めまい感など異変を感じます。出血が多いと意識を失ったり、痙攣(けいれん)を伴うこともあります。
応急対策
くも膜下出血が疑われたときは、
- 患者を横にする
- 不用意に動かさない
- ゆすったり、たたいたりして呼びかけしない
- 楽に呼吸できるように顎を引き上げる(気道確保)
- 衣服を緩める
- 嘔吐にそなえ、顔を横に向ける
- ぐに救急車を手配。脳神経外科に運んでもらう。
以上は、脳の病気に共通した対処法です。
診断と治療
も膜下出血はCTで診断し、さらに脳血管造影により出血原因を確認します。その際、時間が経つにつれて血液が薄くなり、診断が難しくなるため、できるだけ早く(1時間以内に)受診してください。
くも膜下出血の治療は、動脈瘤の場合、こぶの根もとをクリップで止める手術(クリッピングといいます)を行います。最近は血管内手術により、動脈瘤にコイルを充填させる手術も行われるようになりました。これらの手術や処置をしないと、いつ再破裂するか分からず、大変危険です。くも膜下出血が疑われるような突然の頭痛があったら、必ず脳神経外科を受診しましょう。
脳疾患の診断と予防
脳の病気では、「手足に麻痺やしびれを生じる」、「視力が弱り見えない部位が存在する」、「意識がおかされたり、言葉がしゃべりにくい」といった神経や精神に異常を伴って来る傾向があります。CTスキャン(コンピューター脳断層写真)やMRI(磁気を使った脳断層写真)で、脳疾患を比較的簡単に発見できるようになってきています。脳ドックの受診などで、頭痛の原因と誘因を早期に発見し、早期治療を心がけるようにするといいでしょう。

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間中 信也(まなか・しんや)
温知会・間中病院院長 -
東京大学脳神経外科助教授、帝京大学脳神経外科教授を経て現職へ。日本頭痛学会理事、日本脳神経外科学会評議員。主宰するホームページサイト「頭痛大学」は、97年の開設以来395万件の入場者を数え、頭痛で悩む人の救いとなっている。『頭痛はこわい―手遅れになる前に読む頭痛治療の指南書』(河出書房新社)、『頭が痛い―元から断つ方法がよくわかる』(小学館)、『ドクター間中の頭痛大学―しつこい痛み、さようなら』(法研)など著書多数。
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